CONTENTS
クワガタ武爺の温泉に行こう!(秘湯編)2001.1.6.
天城峠の怪2000.8.7.
京都会館の謎2000.8.7.
JAZZコンサートに緞帳って似合わないですよね 2000.7.26.
ダイナマイツって凄いんだよ! 2000.7.25.
山野の夏 vol、2 2000.8.14.
山野の夏 vol、1 2000.7.18.
日々、音に包まれている毎日を送っていると突然、我を忘れて人里離れた温泉に行きたくなってしまう。これは一種の禁断症状から来るフラッシュバックと似ているのかもしれない。現実逃避なのか英気を養う為なのかは自分でも定かではないが、ほぼ2年周期でこの衝動がやって来る。私が住んでいる近場には温泉はないので、やはりどうせ行くなら山奥にある静かな温泉に向かってみたくなる。
アメリカが生んだバタ臭さの象徴であるビッグバンドジャズとまるでわびさびの趣のある温泉の両方が大好きとは何と自分は不思議な人間なのだろうか…いや、ビッグバンドジャズと温泉の接点は確かあったはずだ。昔サド&メルが来日した時に今は亡き某有名ジャズ評論家がバンドメンバーと共に温泉に浸かった話を聞いた事がある。もし事実であるならば、私は少しだけサド&メルに近づけたかも知れない。(何のこっちゃ?)
山奥の温泉・…秘湯
人間が作り出した音や音楽に比べ、自然が生み出す静寂はなんとも荘厳であり、計り知れない魅力で私を虜にしてしまう。自然の営みは微かな私の鼓動ですら飲み込んでしまう。
特に山深い場所にポツンと存在している秘湯を訪れることこそ私にとって心安らげる最高の贅沢である。
それでは熱海、有馬、石和、塩原、鬼怒川等の有名温泉地と私が大好きな秘湯と呼ばれる温泉の違いについて比べてみよう。
| 有名温泉地(郷)と秘湯の違い |
有名温泉地(郷)
○ 交通の便が良い。
○ 大半が無味無臭且つ透明なお湯である。
○ 入浴時間が制限されている場合がある。[沸し温泉である証拠?]
○ 混浴が皆無(怒!)怪しげな家族風呂が幾つも仕切られた小部屋風に存在している。
○ パブ、スナック、パチンコ店やヌード、ストリップ劇場等の歓楽街が近くに存在している。
○ 巨大旅館がひしめき合っており、大型観光バスの温泉ツアーが常に組まれている。
○ 短期間(一泊二日、長くても二泊)の宿泊客を対象としている。
○ 豪華で巨大な岩風呂や檜風呂を旅館の売りにしている。
○ 消防設備など防災に十分心掛けている。
○ 泊まりでなければ大旅館の温泉に入にくい(私には入浴だけと言うのはかなり勇気がいります)
○ 冬期スキー場と結託して不当に高かったり、劣悪なもてなしに遭遇する場合がある。
秘湯と呼ばれる温泉
○ 車の騒音や日常生活で当たり前の音が無い。
○ 24時間温泉に入れるのが基本。沸しの温泉ではない証拠。
○ 駅からバスやタクシーで1時間以上の山中、海沿いにある。
○ 基本的に混浴。
○ 携帯電話などの電波は当然届かない場所にある。ラジオすら入りづらい。
○ 電気が通っていない事が当然の立地条件に存在している温泉もある。
○ 長期間の湯治を目的としている客の為に自炊が出来る設備がある。
○ 冬場は閉鎖されている場合が多い。または冬営業していても部屋の暖房は最小限で大変寒い。
○ 大型観光バスで行くにはかなり無理な道路状況の場所にある。
○ 各部屋に電話やテレビの設備が置かれていない事もある。
○ 客室数も少なく毎年決まった客が予約をしているので、おいそれと急に泊まる事は出来ない。
○ 食事は自然食が中心で量も程々、海が近くもないのに刺身が出るなどあり得ない。
○ 火事が起きたら直ぐにでも燃え落ちてしまう建物が多い。またその場しのぎ的な増改築の為、館内に慣れるまでに度々迷子になる。
○ 泊まらなくても温泉だけ入らせてもらう事が頼みやすい雰囲気がある。
○ スキーヤ−の為の宿泊施設にはあまり使われない。
| 私の温泉ベスト 3 |
第三位 長野 仙仁温泉 岩の湯(せにおんせん)

ここは約20年前、気ままな旅の最中にふとした偶然から知る事が出来た温泉である。
せに(仙人)伝説が伝わる昔の深山幽谷の地にある。 平安時代末期に山伏が発見。信玄の隠し湯であったそうだ。 奥行き30メートルの二又に分かれた天然大洞窟風呂で知られる秘湯。近くには温泉宿は無くて全くの一軒宿である。宿のある場所仁礼(にれ)は、谷街道と大笹街道の分岐点、谷街道は越後(新潟)との交易の道。大笹街道は北国街道を迂回する短縮ルート。共に江戸時代に栄えた街道筋である。
近年私が再び伺った時には高級割烹料亭のような豪華な温泉旅館に変身を遂げてしまっていたので、旅館に入る時思わず足を止め見上げて一言「おッ!豪華
!!」
今回第三位にしたのは私のように気ままな一人旅をする人間にとっては少しばかり敷居が高い(宿泊料金が高い?)気がしてしまい、雰囲気としてはリッチな家族旅行の方が相応しいだろう。まだ私のような若輩者にはちょっと似合わないかも知れない。
しかし温泉は以前来た時と変わり無く見事な湯量と洞窟風呂は健在で天然のサウナを満喫する事が出来た。また以前とは段違いに衛生的になっていてすこぶる快適な温泉を味わう事が出来た。平成元年に改築されてから男女別の浴槽も増え家族向けの秘湯として新たなスタンスを打ち出しているようである。食事に関しても個室でゆっくりと山の幸をふんだんに味わう事ができ、一時の贅沢を満喫できた。改築によって一抹の不安があった洞窟風呂は相変わらず混浴であった。…思わずほっと胸をなでおろす私であった…
所在地 〒382-0034 長野県須坂市仁礼
泉質 単純硫黄泉
泉温 37度
効能 心臓・血圧・糖尿病・神経痛・胃腸・痛風・冷え性・婦人病・皮膚病・便秘の湯
露天風呂 なし
共同浴場 なし
風呂 大浴場男女別各1・中浴場男女別各1・大洞窟風呂(混浴)・家族風呂
宿泊収容:100人 客室19
宿泊料金 \19000〜¥320001泊2食付きの料金 休前日は¥2000アップ。
営業 風呂だけ利用の日帰り客は受け入れてくれない
周辺には、スキー場のほか美術館、博物館が数多くある。
旅館 花仙庵仙仁温泉岩の湯:電話:0262-45-2453
交通機関
電車・バス利用
鉄道 JR長野駅で長野電鉄に乗り換え、須坂駅下車。仙仁行きバス30分終点下車
車で
上信越自動車道須坂長野東ICから10km(IC→R403→幸高交差点右折→県道須坂長野インター線→R406)
第二位 秋田 乳頭温泉郷 鶴の湯


さすが秋田である。究極の温泉がここにあった。かなり山深い場所にあるためか道は砂利道とぬかるむ泥道を延々と車で走らなくてはならない。街路灯など全く無い場所なので夜ここに辿り着く事はかなり難しいであろう。山道の途中、分かれ道にある看板を見過ごすと国民休暇村に着くまで道を間違えている事に全く気が付かないのであまりスピードを出さず、周囲には充分注意して走らなくてはならない。
まず何が決定的に秘湯の印象を与えるかと言えば、文明の利器である電気が通っていない。今でも湯治を目的としている為か水車による水力発電によって得られた電気は冷蔵庫と電話のみに使われている。宿泊者の為に限られた時間のみ(18時〜22時)各部屋に電力を供給する大型の発電機が稼動する。
最近ではホームページが開設されて 容易にこの温泉を検索する事が可能になった。しかし電気が通っていない場所のホームページとは…なんか不思議な気がする。
肝心な温泉の事を書こう。この温泉には何と4つもの源泉がある。(白湯、黒湯、中の湯、滝の湯)それぞれが違った効能があり特に中の湯は眼病に良く効くとされる珍しい温泉である。
特筆すべき点は野天風呂である。他の温泉宿と大きく違う点は浴槽に湯を運ぶ樋がない。膝丈程の湯の中を歩くと異常に足の裏が痛い。底にはゴロゴロと小石が敷き詰められており、大変歩きづらい。ところが気が付いてみると小石が敷き詰めてある間から泡と共にぶくぶくと大変熱いお湯が涌き出ているのである。うっかり湯が湧き出ている真上に足を置くと飛び上がるほど熱い。小石を敷き詰めることで一箇所だけから熱い湯が出て来るのを防いでいるようだが、残念ながらさほどの効果は感じられない。小さな事には拘らない素朴さとそのまま源泉を湯船にする単純明快さが魅力の野性味溢れる温泉である。
泉質 含重曹食塩化水素泉 50〜60度 (かなり熱い)
効能 高血圧症動脈硬化・抹消循環器障害・リウマチ・糖尿・慢性湿疹・婦人病・眼病
料金
本 陣 部屋食、トイレ共同(外) ¥ 8500
二、三号館 食事は本陣内のいろり食堂、トイレ共 ¥ 8000
一 号 館 部屋食、トイレ共同 ¥ 10000
新 本 陣 部屋食、トイレ洗面所付 ¥ 12000~
東 本 陣 部屋食、トイレ洗面所付 ¥ 12000~
カード精算 可 ・ マッサージ 可 ・ 部屋食 可 ・ 昼食 可 ・ 自炊 可
部屋数 35 ・ 収容人数 120 ・ 送迎 10人
テレビ なし・ 冷蔵庫 なし
携帯電話Docomo 通話可
住所 仙北郡田沢湖町先達沢国有林50 Tel 0187-46-2139
交通機関
電車・バス利用
田沢湖高原駅からバスで約1時間+徒歩約1k(送迎あり)
車で
東北道からは盛岡インターより国道46号にて1時間、田沢湖町内で341号に移り
標識通りに乳頭温泉郷を目指す。 田沢湖からは20分位。
特記事項
ここ乳頭温泉郷では湯めぐりスタンプ帖があります
乳頭温泉郷各施設の宿泊者に限定発売されています。一冊¥1,000円(税込み)
ご利用方法
スタンプを押してご入浴が出来ます。七軒の温泉を無期限で利用出来ます。
日帰り入浴データ
施設名 開始 ⇒ 終了 料金
鶴の湯 8:00 ⇒ 17:00 400円
黒湯 7:00 ⇒ 19:00 400円
孫六温泉 7:00 ⇒ 18:00 400円
蟹場温泉 8:00 ⇒ 18:00 400円
大釜温泉 8:00 ⇒ 18:00 500円
妙乃湯 9:00 ⇒ 15:00 1000円タオル付
休暇村 8:00 ⇒ 18:00 400円
清掃、整備等で営業時間が変更される場合があります。無料駐車場は各旅館にあります。
第一位 長野 白骨温泉 斉藤旅館


JR松本駅から私鉄の松本電鉄に乗り換えて約1時間、終点の新島々駅から乗合バスに乗って約1時間半の道のりの終点にあるのが白骨温泉である。私がここに泊まった4月中旬ともなれば東京では桜が散り、コートをそろそろ必要としなくなる季節である。ここに至ってバスの窓からはスーパー林道の両脇に残る雪や墨絵の如き山肌を見るにと自分が下界から遠ざかって行くのが実感出来る。ここには今だ冬から抜け出せない広大で荒涼とした風景が目の前に迫って来る。私は冬山登山やスキーなど全てのウィンタースポーツとは全く無縁の人間である。しかしながら孤独を求める一人旅と格好をつけつつも一抹の不安と淋しさから誰もが一度はこの光景を目にしたならば言葉を失うのではないだろうか。冬、陽の当たらない山腹の急なカーブには至る所がアイスバーンになっていて到底マイカーでここまで来ようなどとは考える余地も無い。
バスは途中春スキーが出来るゲレンデで暫しの休憩を取る。驚いた事にバスはスキーで滑って来る事が可能な一番下の場所にデカイ顔をして堂々と停車している。山から滑って来てスキーを脱ぎ、そのままバスに乗り込む為なのであろうか?冬の常識を殆ど知らない私なので勝手に納得してみるが、どう見ても冬真っ只中でスキーをしている人々を見ているとこれ以上奥地の温泉場は果して大丈夫なのだろうか。電話で予約はしてはあるものの実際、宿に着いて宿泊を断られるのではないだろうか等々、バスの出発を待つ間に色々な不安が頭の中を駆け巡る。
バスは休憩を終え再び雪とアイスバーンの混じる山道をのろのろと終点に向かって走り出す。山奥に進むほどに軽トラックですら、すれ違えない狭い道をバスはズルズルと引きずるように登って行く。気が付くとゲレンデで休憩していた時には十数人いた乗客も終点近くでは私一人になっている。一体何処に消えて行ったのだろう。民家など何処にも見えなかった気がするのだが…やはり益々不安が募って来る。
…しまった!今回は怪気物シリーズではないのに何と無く不穏なムードが漂い出してしまった…
バスが泡の湯バス停を過ぎると目指す白骨温泉に漸く辿り着く。
終点の白骨温泉には旅館が約10軒程あるがその中で私は斉藤旅館を予約した。見るからに斉藤旅館は古いたたずまいを残す落ち着いた木造建築である。旅館の玄関を入ると私の不安をかき消すように暖かいもてなしで旅館の方は私を迎えてくれた。その昔この温泉は白舟温泉と呼ばれていたそうで湯船が四角の浴槽ではなく所謂舟の形をしていた処から白舟が変化して白骨と呼ばれるようになったらしい。また大正時代に新聞に長期連載された中里介山の「大菩薩峠」で広く世間に知られるようになった温泉でもある。
白骨の白の意味として実際湯の色は真っ白である。陽の当たり具合によっては少し青みがかった色に見える。この涌き出た湯が固まると「球状石灰岩」と呼ばれる天然記念物に指定される程、大変濃度の高い硫化水素泉である。したがって湯の面から約2cm程下は全く見えなくなる。
湯の温度はそれほど熱くはないので長く浸かっていてものぼせる事はあまり無い。但し、いきなり長時間の入浴は温度に関係無く湯あたりするので注意をしなくてはいけない。
私は長年ストレスから来る胃潰瘍と付き合っている所為か、特に胃腸病に特効があるとされるこの温泉が日頃の疲れを癒すのには日本で最高の湯と確信している。せめて私が死ぬまでにあと10回は通いたい温泉である。
●泉質は、単純硫化水素泉などで微酸味をおびているのが特徴。
問い合わせ先 白骨温泉案内所(営業時間AM9:00〜PM5:00) (TEL)0263-93-3251
交通機関
電車・バス利用
東京から
新宿〜中央東線特急約2時間39分
大阪から
大阪〜名古屋/新幹線約1時間
名古屋〜中央西線特急約2時間5分
松本から
松本〜新島々/松本電鉄上高地線約30分
新島々バスターミナルから約55分
車で
東京から
中央道〜長野道松本IC約2時間30分
大阪から
名神〜名古屋まで約2時間
名古屋〜中央道〜長野道松本IC、約2時間30分
松本ICから
R158,県道白骨温泉線で約1時間
高山から
R158,県道白骨温泉線で約1時間30分
後記
ジャズが好き、でもじっくりと温泉を味わったことが無い方に向けてこのページを書いてみました。
今回取り上げた温泉は秘湯と言われながらも一般的にはかなり知名度の高い有名温泉ですので興味を抱いた方は是非足を運んで頂きたいと思います。全国の温泉に関するホームページは最近大変検索しやすくなってきましたので、限定されずに好みに合わせて選ぶことが可能になりました。
私にとって旅を続ける合間の温泉は至福の時です。私なりにはPAの仕事をしているからこそ、一人で温泉に浸かる権利を(家族に対して)持っていると思っています。しかしただ温泉に浸かるだけが楽しみではありません。食事の楽しみの他にも訪れた各地の風物や人とのふれあいが(コンサート作りにも共通します)そこにあるからこそ本当に楽しめと考えています。
湯船で偶然居合せた湯治客同士の会話には人それぞれの人生観がリアルに表れてきます。
お互いに旅人であり二度と会う事がない現実から生まれる会話には自分を着飾ろうとする嘘は存在しないのです。
同じ風呂であっても近所の銭湯での会話と大きく違う点はここだと思います。
近年、温泉の宿泊料金が高額になる傾向が進み、なかなか気軽に温泉に向かう気になれないのは実に残念な状況です。不況の風は一向に止まる気配がない為に尚更足が遠のき気味になってしまいます。温泉がもう少し庶民の手が届く場所にあればと願うばかりです。
少なくとも目的地に辿り着くまでの時間や交通費を考えると一泊料金として私には15000円程度が限界でしょう。
私が生きている間に日本中の温泉全て入るのは不可能でしょうが、コンサートの旅を続ける事が出来る限り未知の温泉(秘湯)を訪ねてみたいと思います。
もし、偶然にもこのページを読んだ温泉好きの方と湯船の中で遭ったとしたら…
・…「そりゃ、夢物語ですね」・・…
今後さらに感動の温泉に出遭った時、またこのページに追記したいと考えています。
2001.1.6. 記
このページに関するご意見ご感想をお寄せ下さい。温泉に関する(Jazz的な)情報交換でもしませんか。
Mail to クワガタ武爺 m-takeuchi@rhythmhouse.co.jp
天城峠の怪

旧天城峠のトンネルを湯ヶ島側から見る
<旧天城トンネル>
1996年8月24日午後3時頃、私達は伊豆の天城峠(旧道)で催されるイベント会場に赴いた。標高800メートル、伊豆の踊り子や石川さゆりの歌で有名な天城峠である。現在は昭和45年に新しいトンネルが作られてからは車の通行が禁止されている。昼間はハイカーのために遊歩道として時間制限が設けられ夜間の通行は禁止されている。旧道入口から舗装されていないブナやカエデがうっそうと茂っている砂利道を約10分ほど登るとそこには山肌をえぐった古めかしいトンネルが現れる。これが旧天城トンネルである。全長400メートルもあるのに車が一台分しか通れない幅を見ると、たぶん昭和以前に作られたトンネルであったに違いない。今回この場所でトンネルの入口をバックにイベントが催されるのである。

イベントの内容は歌手の中島啓江さんとオカリナ奏者の宗次郎氏によるジョイントコンサートである。本番は翌日なので我々が着いた日は軽くメインスピーカーのチェックとモニターのサウンドチェック程度なので小1時間もあれば済んでしまう作業である。静かな場所なのに遠くから低い騒音が連続的に唸りをあげて聞こえてくる。人里離れたこのような場所にコンサート用の大容量の電源は無いので音響、照明とも大型の発電機から受電しているためである。
<何かが始まる>
私達は宗次郎氏のスタッフと共に組上げられたPAのチェックに入ろうとした時である。いきなり誰も触っていない照明が点滅を始め、制御不能になった。状況からすれば誰もが当然発電機の調整ミスであろうとタカをくくっている。ところが発電機は全く問題無いとの連絡が入り、照明スタッフは機材のチェックに奔走している。我々はその間にPAチェックを終わらせて今夜の宿でゆっくり温泉にでも浸かろうかなんて悠長な気分で音を出し始めると、PAから出る音が勝手に大きくなったり小さくなったり照明と似たような状態になってしまった。電球は0ボルトから100ボルトの間で光量はほぼ正確に反応するが、音響機器は約80ボルトを切ると全く音が出なくなるので電圧の変化で音の上下は基本的には不可能であるのにこれが現実に起っている。何も出来ないまま暫くすると発電機が突然ダウンしてしまったとの連絡が入りしばしその場に待機することになった。
<トラックが・・・>
「やはり発電機か…」なんて一安心していると辺りがあまりにも静かな事に気が付いた。峠であるので当然風はある程度吹いていてもよさそうなものが一切空気の流れを感じない。しかも山の中で夏の夕方であるからには鳥や蝉の声が聞こえてたり虫の鳴があるはずが、まるで深夜のオフィスビルの中に入ったように何の音も聞こえてこない。離れた場所に設置されていた発電機の騒音が止まった所為でこの静けさに気が付いた訳である。辺りをブラブラしていると連絡が入ってきた。「今まで使っていた発電機はどうやらダメなので代わりの発電機に変えるので暫く待っていてくれ」となる。待つこと1時間、すると今度は「発電機を積んだトラックが崖から落ちたので今日は無理」と連絡が入った。実にとんでもない事である。我々のやらなければならない作業以上にまず人命の方が気になるが、誰もそのことに関して情報を伝えてはくれない。霧も出ていないのに話しは霧の中である。もし本当ならばコンサートどころでは無くなる事件である。下手をすれば明日の朝刊3面記事に載りかねない展開かもしれない。しかしその後の情報は無いまま宿へ帰る準備に入る。東京から近い伊豆であっても山の日没は早足でやってくる。辺りは街路灯も無いので月明かりだけが頼りの暗さとなってしまい、とうとう一日何もしないまま現場を後にする事になった。

<宿にて>
さて、宿に帰ってからが実は本当の怖さが襲ってきた。宿の人が言うには当たり前のような口調で「いつも何かが起きる」と一言。「誰もちゃんと御払いをしていないからそんな事が起きる」と付け加えられてしまった。明治時代の越すに越せない峠の迷信は今日鮮やかに現実となって甦ったらしい。後で知ったが天城峠は全国でも有数のミステリースポットとして紹介されているそうである。この日の夜、宿にて中島啓江さんの事務所で買ったばかりの外車がぶつけられるという出来事まで起きてしまった。
翌日、我々は丁寧に御払いをした後、作業に入り問題無くリハーサルを終わらせ本番を迎える事が出来た。辺りは昨日の事が嘘のように鳥や虫の声が聞こえ風は爽やかに木々の香りを運んでいた。しかし一体どんな事件がここであったのであろう。今まで一度も迷信などを信じた事の無かった私であってもこの日の事は後になって思い出すたびに鳥肌が立つ。
2000.8.7.記
所在地 天城湯ヶ島町
電 話 0558-85-1111
利用料金
営業時間
駐車場 なし
付帯施設 トイレ、休憩舎
交 通 修善寺駅よりバス50分天城峠下車、徒歩10分
京都会館の謎
我々がコンサートツアーで日本中の会場を旅していると時々不思議な物を見たり、言葉では説明できない現象を体験する事があります。必ず出る(幽霊)会場や奇妙な事件が立て続けに起きる現場など、今回は色々な不思議がテーマです。
京都でコンサートを開くとなれば京都会館が有名です。この会館の楽屋床には幾つもマンホールが点在しています。さて、何故に微妙な場所にマンホールは置かれているのでしょう。長く京都にて音響会社を続けておられる徳竹氏もこの謎は知らぬそうです。マンホールのセンターに掘られているNまたはZのマークはいったい何を意味しているのでしょうか。この中に流れているのは・・・・ステージへの秘密の出入り口?・・・・第一会館の楽屋と第二会館の楽屋の連絡通路?・・・誰か知っている方はおりませんか。会館の方にお聞きするのはなぜか気が引けてしまうので・・・
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歌謡ショーの開幕です!
開演ベルが場内に鳴り響く、客電が消えイントロが流れ出すと場内は割れんばかりの拍手の中、緞帳がスルスルと開きそこには髪の毛をアップにした美しい着物の女性歌手がセンターに深々と頭を下げて立っている。これがまさに歌謡ショーが始まる典型的な開演風景です。
ステージの美しさ
近年、学生及び社会人BIG BANDの開演風景も殆どが同じ状況です。
私が学生の頃の記憶を思い出すとパンフレットを片手に会場に入り、開演までの時間、ステージに美しく並んだ箱面台とそこに書かれているバンドの文字、ピアノそしてドラムを眺めているだけでも気持ちが高揚してくるのを感じることが出来ました。開演ベルが鳴り終わり客席が暗くなると暫くして遠めにも偉そうに見える楽器を抱えたミュージシャン達がバラバラと現れ各々の椅子に腰を掛け軽く楽器の音をチェックしながらおもむろにチューニングを開始する。こういった光景を見ているだけでも一曲目に対する期待で胸がドキドキしていたことを思い出します。
ところが最近、音と共に緞帳が上がるのが常識になってきた感があります。これは客席で聴くと実に不自然な音として聞こえてしまいます。特にJAZZのPAではロックコンサートの様には大きな音作りをしていないため最初幕が半分以上開くまではめちゃくちゃなバランスになって聞こえてしまうのです。私としては1曲目から最高の状態で聞きたいものです。
心理状態を探る
最近プロを含め緞帳を使うようになる傾向にあります。ステージ上の心理からは幕が開くまではのんびりしていたいのでしょうが、私はむしろそれは逆効果ではないかと考えます。本番のベルが鳴った瞬間全員がいっせいに緊張する事になります。素人では尚更だと思います。お互い顔を合わせる間も無くドラムのカウントが始まり歓声の中で演奏を始めます。普段コンサートの一曲目は力の入った難しい曲となっている場合が多く、数多くのプレッシャーがバンドを押し潰そうとするものです。しかし、ゆっくりと明るいステージに出てきて客の入りや顔を眺める余裕があるとしたらかなり気持ちにゆとりが生まれると考えます。この時の観客の掛け声は学バン経験時、実に嬉しいものだったと私は覚えています。
隠すか、終わらせるかの違い
ベイシーをはじめ多くの来日BIG BAND JAZZ ORCHESTRAのコンサートで殆ど緞帳を使用しているのを見たことがないのも本来緞帳のない所で生まれた音楽だからなのではないでしょうか。JAZZもクラッシックも同様ではないかと考えます。
また緞帳に対する意識が日本と欧米では根本的に違うのかも知れません。欧米にも勿論、緞帳は存在しますが多くは両サイドから閉まるタイプの物が多く(カーテンタイプ)上から閉まる物はあるとしてもその次のシステムとして使用されています。使用方法としてはカーテンを閉めることで催し物の終わりを意味し、カーテンコールを前提に使わていますが、日本の場合ステージを隠す意味で使われます。遮音効果も考慮されており、かなり音を遮る事が出来るようになっている為、ぶ厚く重くしっかり閉まるように一番下の部分には太い鉄の棒が入れられています。よって緞帳の閉まっている中で音出しをしても殆ど客席にもれる事はありません。しかし上から降りてくる緞帳では危なくてカーテンコールどころではありませんよね。
願い
文化の違いと一言に結論してしまうのは危険ですが、演歌や歌謡曲のスタンダードなスタイルと同じだから違和感があるのでしょうか。やはり日本人だからでしょうか。むしろ緞帳本来のあり方の違いが違和感を生んでしまうのでしょうか。どうもそれだけとは思えないのですけど……
出来ればステージを隠さないで下さい。聴衆は始まるまでの光景も楽しみの一つなのですから。
2000.7.26.記
今回は私の大好きなグループ「The Dynamites」についてのひとりごとです。
VAPレコード(VPCD80516) \3059(税込)
現在TVで聞くことが出来るCM曲
○Rhapsody In Charleston ※ TV-CM Sound(ロート製薬メンソレータム)
composed by Eiji Taniguchi
○Song for Pee ! ※ TV-CM Sound(花王洗浄力ファミリー)
composed by Yuichiro Goto
○TANGA ! ※ TV-CM Sound (メルシャンワインビストロ)
composed by Eiji Taniguchi
メンバー構成
現在の編成はヴァイオリン(ヴィオラ持ち替え有り)、チェロ、ガットギター、クラリネット(バスクラリネット、リコーダーの持ち替え有り)の4人編成です。現在はチェロの方がサポートメンバーとして参加されています。
サウンド指向
ステージの並び方は室内楽のスタイルを取り入れています。曲は殆どオリジナルで構成されています。しかしサウンドはポップですが最近流行っているアンプラグド的なラインと生音混在の中途半端なライブサウンドではなくライブハウスのみならずホールコンサートでもPAをMC以外には一切使用せず完全なまでのアコースティックスタイルを徹底しています。クラッシックとJazzの合成のように見えますがはっきり言ってそんな安易な物ではありません。
活動状況
CDを作るだけで実際にライブをやらない風潮が蔓延る中で、彼らはむしろCDはライブの副産物と捉えているように思えるほど精力的な活動を展開しています。青山スパイラルカフェを拠点に地方を含め様々なライブ会場にて演奏活動を続けています。ライブの行われる日時は定期的ではなく、各メンバーのフィールドが多岐の分野に渡っている為、スケジュール調整が可能な範囲ギリギリの活動をしています。レコード店の店頭ライブを行うなど野心的な活動にも目を見張ります。スケジュールはダイナマイツのホームページから常時最新の情報を知る事が可能です。
ライブ情報 ダイナマイツのホームページ
アルバム 「The Dynamites/Colorssic 」 98.6.21.バップより発売 VPCD-80516
ダイナマイツの魅力を探る
噎せ返るような甘く切ないロマンティズムとたたみ込むダイナミズムの両端を併せ持っているダイナマイツ。たった4人の編成ながらなんと大きなスケール感を有しているのでしょう。CDに収録されている全てのナンバーのみならず、ライブでの圧倒的な一糸乱れぬアンサンブル力、そのどれを見ても妥協の二文字は見受けられません。その上すぐにでも口ずさめる程ポップなメロディは一体どうして生まれてくるのでしょう。常に言葉では表現出来ない感動をこのグループは与え続けています。彼らのアルバムを聞くと様々なジャンル、スタイルの曲が顔を出します。しかしそれがアルバムとしての統一感を損ないはしていません。実に危険な香りのする禁断の聖地に迷い込んだ錯覚に陥ります。これは一人の独裁的なコンポーザーが全てを掌握するのではなく、メンバー各々がルーツとしている音楽から生まれ出た曲を持ち寄る事でジャンルに捕われることのない自由なバリエーションを展開する事が出来る開放された状況が彼らを守っているに他ならないからでしょう。提供された曲はあくまで個人の所有ではなくダイナマイツの曲として存在し、新たな命が吹き込まれる喜びがより自由な創作意欲へと繋がっているように感じられます。彼らが最高の演奏技術者集団であることは一目瞭然ではありますが、誇示することなくテクニックに頼らない大人のゆとりすら彼らには感じられます。自らの曲に誇りを持ちつつ、刺激を保ちながらも純粋に楽曲のスケール感や瑞々しさを失わずに表現し続けられるのは各々が並外れた才能の持ち主であり音楽への真摯な姿勢の表れを証明しています。
ダイナマイツへの思い
今、ダイナマイツが私の普段ロックやジャズに聞きなれてしまっている耳にあまりにも新鮮に響いてくるのが実に快感です。彼らのデビュー前、ライブハウスでダイナマイツの音響を担当させてもらっていた私は、このサウンドを如何に自然に伝えられるか何度も考えた挙句、結論はPAが存在しないで成り立つ事がダイナマイツに対する理想でした。自分がPAのオペレーターでありながらその仕事を自ら放棄する考えに到達するのはなんとも皮肉な結論でした。所詮、本来PAは音楽の補助でしかないのです。改めて基本に戻って私の仕事を教えてくれたのがダイナマイツだったのです。しかしPAを使わない事は偏に全ての責任は彼らに課せられるでしょう。アンサンブル、音量のバランス、楽器の位置関係は我々が見て判断する以上に苛酷さを要求されていると思われます。並びの位置が約10センチ変わると客席の奥では1メートル近くずれて聞こえる事になってしまうからです。ヴァイオリン、チェロ、クラリネットのような古来からホールで演奏される機能を完成されている楽器と比べ、ガットギターのダイナミックはかなり幅は狭くなります。したがって演奏会場選びも慎重な作業となるでしょう。余談ですが、ロドリーゴのコンチェルトでソロ用にマイクが置かれているのを見た方もいらしゃると思います。生だけでは会場の広さによってはある程度PAが要求されてしまうのは仕方の無い事ですね。これがクラッシックの世界でダイナマイツの編成で書かれている曲が殆どないのはこの為なのでしょうか。今後、世界中にダイナマイツの名前が広く知れ渡った時、この無限の可能性を秘めたグループに曲を提供する国内外の作曲家が大勢現れたとしたらとても面白いですね。
ここで皆さんに理解してもらいたい事はPAって一体何なのかです。巷ではPA不要論なるものが聞かれます。しかし多くはそれ以前の問題が存在しています。必要以上に薬を飲むのと同じように押し付けられる音量は健康を害します。豊かなイマジネーションを殺してしまい、誰もが同じ感覚、感動を強制される事につながります。個人個人の自由な楽しみ方を可能な範囲守る事もPAが持つ使命だと考えています。
私は何万人と集まるコンサートで一度も良い音を聞いたことなどありません。むしろPAを入れなければならないイベント的な常軌を逸した大コンサートを作る事自体が大問題だと考えます。可能な限り音楽は生まれたままの自然な状況で再現されるべきなのですから。
本当の意味でダイナマイツは素晴らしい活動スタイルを確立して行けると思います。
ダイナマイツの弱点
ここで彼らのライブでの思わぬ弱点を覗き見る事でよりダイナマイツの奥深さを理解する事が出来ます。ライブでの喋りの素人っぽさは壮絶な演奏の余韻に浸って喜ぶ彼らの心理そのままを表しているようですね。気位が高いクラッシック演奏家のようにはなれない純粋で無垢なスタンスが彼らの持ち味でもあります。喋りでは数多くのファンを失望させながらも微笑みと共に納得させてしまう。この堪らないギャップがダイナマイツの醍醐味でしょう。
さて、アルバムジャケットのグラスは果たしてこれから味わう芳醇に育まれたダイナマイツを暗示しているのか、最高の美酒を飲み終えた喜びの如くダイナマイツを表しているのか、その答えは聞いた者にしか推測出来ない楽しみですね。
是非、多くの音楽愛好家の皆さんに知って頂きたいと思うグループです.
2000.7.25. 記
学バンの皆さん山野Big Band Contestお疲れさまでした。本当に素敵なサウンドを聞かせてもらいました。ありがとうございました。やっと苛酷な山野の夏が終わり、私のささやかな夏休みが来ました。日本青年館から帰ってきて目が醒めたら丸一日経っていて体力の限界を痛感した次第です。数日後に幾つかの項目で今回の山野Big
Band Contestで感じた点を整理してみたいと考えています。例えば全て持ち込みのドラムセットは圧倒的に不利になる等々、具体的に感じたままを書いてみたいと考えています。
2000.8.14.記
学バンの皆さんもうすぐ山野の夏がやって来ますね。それぞれの学バンの皆さんは必死で練習の毎日と推測致します。なんと今年は高校生のBIG
BAND JAZZ ORCHESTRAがゲスト出演するそうで、PAサイドから見て吃驚致しました。山野さんも色々な趣向を生み出すものですね。今回のステージに出た高校生はきっと数年後、どこかの学バンに居たりするのでしょうね。過去にニイニイゼミオーケストラの初期のメンバーが学バンに入っていたりしてますからね。これは大きな意味で山野さんのBIG
BAND JAZZ 啓蒙活動と見て良いのでしょう。しかし、会場の客は殆どが出演する学生達ですから高校生達が演奏している時、果たして客席で聴いていてくれるのでしょうか、その時だけ高校生の親御さんと入れ替わるのでしょうか、甚だ謎です。でも私の夢はサド&メルにもう一度逢いたいでもなければ、一関のベイシーでフレディーのいるカウントベイシーオーケストラを聞きたいでもありません。出来れば30分位なんにもしない休憩が欲しいと私は思います。朝から本番が終わるまで食事が出来ないのは我慢出来るのですがなんともタバコが吸いたい・・・・・・それも素敵な香りのするガラムを・・・・・・それから本番中ゆっくりトイレに入りたい!もしコンテストの本番中青い顔をして脂汗を流してオペレートしている髭の爺が居たら絶対声を掛けないで下さい。・・・・・・たぶん漏らします・・・・・肩など叩かれでもしたら・・・・・・絶対果てます・・・・・・
2000.7.18. 記
