Thad Jones・Mel Lewis & The Jazz Orchestra
DISC LINEUP Vol.17

PRESENTING
Featuring
Recorded Data
May.4〜6.1966.
Recorded Place
New York City A&R Studio
First Sale
1966
Distribution
Solid State
LP/CD/LD/VHS/DVD
LP/CD
MOSAIC MQ/ MD5-151
LP
SM17003(Mono)SS18003(Stereo)
CD
***



Trumpet
Tromborn
Reeds
Rhythm Section
                                         
Thad Jones
Bob Brookmeyer
Jerome Richardson
Mel Lewis
Jimmy Nottingham
Jack Rains
Jerry Dodgion
Hank Jones
Richaed Williams
Tom McIntosh
Joe Farrell
Richard Davis
Danny Stiles
Cliff Heather
Eddie Daniels
Sam Herman (Gtr)
Bill Berry
Pepper Adams

1 ONCE AROUND       5:24
2 WILLOW WEEP FOR ME 5:34
3 BALANCED SCALES =JASTICE 4:58
4 THREE IN ONE 5:45
5 MEAN WHAT YOU SAY 5:26
6 DON'T EVER LEAVE ME 4:33
7 ABC BLUES 12:53

一言二言・・・

記念すべきサド&メルデビューアルバム!

凄腕のメンバー達が数ヶ月のリハーサルを経て世に送り出したファーストアルバムです。
サド ジョーンズは62年にベイシー楽団退団後、数々のセッションを経て盟友であるメルと共にようやく自分のバンドを持つことが出来ました。

退団後の4年間に数々のソロアルバムのリリース、アレンジメントの勉強をすると共にベイシー楽団では経験できなかった白人のプレイヤーと演奏する貴重な時間を得ています。

この経験とはサド ジョーンズより先にベイシー楽団を退団したクインシー ジョーンズによる第一期クインシー楽団への参加でした。
当時のクインシー楽団はスタープレイヤーを擁し斬新なアルバムを立て続けに発表しておりJazzのみならず音楽界の変革とまで言われる活動を展開しています。

サド ジョーンズはこの体験をより自分流に具体化した結果がThad Jones & Mel Lewis Orchestraの基礎なっていると言えるでしょう。
特にこの時期からサド ジョーンズがアレンジした作品のエンディングトーンに明らかにクインシーの影響が感じられます。

また興味深い点はクインシー楽団の活動停止時期とサド&メルの活動開始がほぼ一致していることです。

サド ジョーンズは如何にバンドを維持運営して行かねばならないかもクインシー楽団を経験することによって大きなヒントを得たように思います。(当時の影のブレーンであったラジオ局のプロデューサー AlanGlant氏の関与も無視できません)
その後現在に至る数多くのMonday Night Liveが生まれたその背景にはクインシー楽団の経緯があるのです。

さてサド ジョーンズがこのアルバムを制作するにあたって相当の拘りを感じる点を挙げようと思います。
1曲目の”ONCE AROUND”はかつてベイシー楽団在籍中ベイシーに作品を要請され却下された作品の一つです。
ベイシーはサドから提出された全8曲のうち7曲をリハーサルしたのですが特にこの曲だけはリハーサルすらされなかった作品です。
アルバムの構成上自然と一曲目になったのでしょうが、わざわざ冒頭に配置されたのにはサドの執念?がこもっているのかも知れません。

Thad Jones & Mel Lewis Orchestra の歴史の中で最も演奏回数が多かったとされる”MEAN WHAT YOU SAY”は歴代のピアニストの中でも最もシンプルなプレイをこのアルバムで聞く事が出来ます。
やはりこの曲での人気は次期ピアニストになるRoland Hannaに軍配が上がるかもしれませんが華麗なHannaに比べワビサビを心得たHankのプレイも見事だと言えるでしょう。
またこの曲で初のソロレコーディングを経験した Eddie Danielsのプレイも将来を期待させる名演と言えます。

ところでこのアルバムはサド ジョーンズ以外の プレイングアレンジャーが登用されています。
Tom McIntoshによる”BALANCED SCALES =JASTICE”と Bob Brookmeyerによる”WILLOW WEEP FOR ME””ABC Blues”です。
サドはベイシー楽団当時に却下されたアルバム一枚分の作品があるにも拘らず自分の作品以外をアルバムの重要な位置に配しています。(ベイシーに却下された作品ではONCE AROUNDのみが今回収録)
アルバム収録時間のほぼ半分を他のアレンジャーに任せて見事に一枚のアルバムの統一を図っています。
参加メンバーにアレンジする場の提供もこのバンドの方向性の一つだったのでしょう。
サドが如何にこのバンドの未来を考えていたかが伺えます。

特にジャズとは縁遠いクラシカル(しかも現代音楽風)な響きを得意とするBob Brookmeyerのアレンジはその後サド ジョーンズの作風に多大な影響を与えていると言っても過言ではないでしょう。

余談ですがサド&メルデビュー当時にホールにてプレゼンテーションがあったとされています。
特にこれからの若い世代にアピールをする為でしょう大学のホールを使ってのコンサートが開催された記録が残っています。
ニューヨークにあるHunter Collegeにて66年5月に行われていますが後に演奏が行われた会場は支援者の名前を冠してダニーケイ劇場となっています。会場は大学敷地内にあり多目的な設備は少なく演劇用に対応できる700人程度が収容出来る広さです。余談ですが偶然にも私は10年程前この会場でオペレートをする機会に恵まれました。
些細な話ですがサド&メルの空気に少しだけ触れる事が出来てサド&メル狂いの私にとって嬉しい一時でした。
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さて、ここからは私の職業癖ゆえのコメントです。

このアルバムについて録音の面白さを述べてみたいと思います。

当時のレコーディング技術はモノラルからステレオへの過渡期で当然まだ巷(リスナー)ではステレオプレイヤーが多くは出回っていない頃でした。

発売されるアルバムも購入者を考えてモノラル盤とステレオ盤が2種類(Stereo盤はモノラルのプレイヤーでは聞く事が出来ないと誤解されていた時代)が発売されています。
もちろん収録内容は同じなのですがそのミックス方法に色々な工夫がされております。

このアルバムもモノ盤が存在するのですが圧倒的にモノ盤の方が良い結果に仕上がっています。
正規盤となるSS18003はステレオ時代初期だった為、左右のバランスのみならず奥行の設定に無理があります。
エンジニアにとって慣れ親しんだモノラルの場合楽器同士で構築するだけでバンドのスケールが実現できるのですがステレオになると再現空間を無理やり広げることによってハーモニーの分離を是正する必要が生じています。
その是正方法が過多なリバーブ処理を施す結果になっています。
風呂場の中で唄っているような臨場感は今聞いても不自然なサウンドと言えます。
しかし当時のレコーディング技術ではまだモノラル録音が基本、やっと4トラック マルチレコーディングに移行したばかりだったので仕方がないとしか言いようがありません。(ほぼ同時期のビートルズ サージェントペッパーやイエローサブマリン等も同じ状況ですね)

結果的に4個のトラックには1trサックスセクション、2trトロンボーン&トランペットセクション、3trリズムセクション、4trソリストとなってしまったのでしょう。
その為ステレオ盤では左にサックスセクション、右にトロンボーン&トランペットセクション、中央にソロとリズムセクションとなっています。ステレオである為に無理やり左右に広げなくてはならない当時の風習からリバーブを深くかけて左右の分離をまとめようとした感があります。尚、先に記述しましたモノラル盤は全く違うバランスで構築されておりより音楽的なサウンドだと言えます。
もちろんこういった試行錯誤の結果が今日に至っているのですが技術の進歩は様々な形で音楽の表現に多大な影響を与えたのでしょうね。(ちなみに山野ビッグバンドジャズコンテストのCDレコーディングでは96トラックのデジタルマルチレコーダーが使われていますがPRESENTINGのようなアルバムには・・・足元にも及びません)

56年〜60年代ステレオ初期の録音はエンジニアにとって苦労と工夫そして創造の時代だったのでしょう。

えっ!このアルバムのエンジニアの名前ですか?

なんとPHIL RAMONEです。

私が最も敬愛するレコーディングエンジニアさんです。


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