Thad Jones・Mel Lewis & The Jazz Orchestra
DISC LINEUP Vol.4


PORTUGUESE SOUL
ポルトガルソウル
Featuring
JIMMY SMITH
Recorded Data
1973.2.8/9
Recorded Place
Hollywood MGM st.
First Sale
1973
Distribution
MV2079 (polydol Japan)
LP/CD/LD/VHS/DVD
LP
                                             


A1 AND I LOVE YOU SO 6:13
A2 BLAP 10:50
B1 OPENING PROLOGUE 3:56
B2 1ST MOVEMENT:PORTUGUESE SOUL 10:39
B3 2ND MOVEMENT:RITUAL 4:07
B4 3RD MOVEMENT:FAREWELL TO LISBON TOWN 3:22

Trumpet
Tromborn
Woodwind
Rhythm Section
                                         
Thad Jones
Mel Lewis


今回は非常に長く難解且つ逆説的コメントに終止してしまいました。お読みくださった皆様ごめんなさい!

これはサド&メルの中で唯一ジャズの名門ヴァーヴから発売されたアルバムです。
サド&メルの正式なディスコグラフィにも記載されているアルバムですがレーベル契約の関係でジャケット及びライナーノーツにはバンドの名称、メンバーの名前は一切クレジットされておりません。
残されているレコーディング、活動データから判断すればこの時期のおおよそのメンバーを把握することは可能ですが正確ではないのでので断念しました。
レーベル問題としては1976年に日本で録音された<GIANT STEPS>もバンド名はサド&メルの名前を使う事が出来ずFrank Foster Orch.となっています。

さてサド&メルは残したアルバム総枚数に対してヴォーカル共演作品の割合が多いのが一つの特徴です。
通常ヴォーカル、コーラス以外でフルバンとの共演作品はほぼ4つの楽器類(Piano、Tp、Tb、Sax)ですがサド&メルのアルバムには前記の楽器奏者一人をアルバム全面に渡ってフューチャーした物は皆無です。
サド&メルオーケストラの基本アレンジはコンボ&フルバンにある為、敢えてフューチャーアルバムを制作する要求が生まれなかったのも納得できます。
これはエリントンやベイシー楽団を含めそれまで活動した全てのBIG BAND JAZZ ORCHESTRAとは大きく違う点として認識できるでしょう。
ところが残されたサド&メルのアルバムの中で2枚だけ例外があります。
どちらもハモンドオルガン奏者がソリストとして起用されたアルバムです。
一枚は1976年に発売された<with RHODA SCOTT>もう一枚が今回紹介するアルバム<PORTUGUESE SOUL>です。
ハモンドオルガンとJAZZ ORCHESTRA…普通に考えると尋常ではないこの組み合わせもクラッシックの分野(パイプオルガン&フルオーケストラ)に置き換えてみれば特別不思議な編成ではありません。
20世紀に入ってから書かれた交響曲作品(サンサーンス交響曲NO.3)、管弦楽作品(R.シュトラウス ツァラトストラはかく語りき、ホルスト 惑星)また宗教音楽の多くでオーケストラとオルガンとの合体はなんの違和感も感じさせません。
サド ジョーンズはサンサーンスやブルックナーにヒントを得てオルガンを用いた新たなJAZZオーケストラのサウンドを模索をした節が感じられます。

サド ジョーンズは全6曲のアレンジ、その内一曲はオリジナル作品(RITUAL)の提供をしています。

作品の紹介をしたいと思うのですが残念ながらこのアルバムに収録されたどの作品も際立って語りたいと思わせる部分はありません。
ポイントが定まらないままの中途半端なアレンジと空回りするソリストの対処に躍起になっているサド ジョーンズの姿が浮かび上がってくるだけです。
結局逆説的な解釈ですがサド ジョーンズは実際にオルガンを使用しなくても他のアルバムにてオーケストラにオルガン的なサウンドを取り入れることでヴルーヴさせられる事を証明したに過ぎません。
つまるところサドのお遊びだった(研究材料)としての価値のみが残ったアルバムでしょう。
一方1966年(サド&メルデビュー時)SOLID STATEから発売された同様のアルバムがあります。
これにはサド ジョーンズだけが参加していないサド&メルオーケストラとハモンドオルガン奏者のJIMMY McGriff がカウントベイシーのスタンダード物10曲(CUTE、AVENUE C、L'IL DARLIN'、SPLANKY etc.)を何とオーケストレーションを変えずに弾きまくってしまうとんでもない代物なのですが予想に反して屈託なく楽しむ事が出来るアルバムです。
サド&メルオーケストラが真面目にベイシーを演奏していると言うだけでも凄い事です。特に<CUTE>におけるメルのブラシワークは絶品!
…まぁ、さすがのサドもこれからお世話になるレコード会社の企画盤とは言えベイシーオーケストラを退団したばかりでベイシーナンバーを今更真面目にをやりたいとは思わなかったのでしょうねぇ…

サドについて今回は非常に酷なコメントばかりになってしまったので最後にサド ジョーンズのアレンジの面白さに触れてみましょう。
サド ジョーンズのホーンアレンジの特徴にgospel over tonesと言われる手法が挙げられます。
<Consummation>の"US"で聞かれるア カペラのトロンボーンアンサンブルがその一例です。所謂クラッシックの分野ではcholare(コーラル)と呼ばれる手法をホーンアレンジに取り入れたことにあります。
そもそもコーラルは教会のオルガン奏法から発展したとされています。

より具体的に説明すると主にトランペット、トロンボーンを用いて曲の進行中または冒頭に於いてリズム楽器を使用せず、ある基本の音に対して次々と音を重ねて厚みのある荘厳な響きを構築します。
音の積み重ねだけであれば単純なベルトーンですがインテンポにてコード展開するのがコーラルです。
音を積み重ねたのち一定の飽和状態に達すると更にコード展開をしてもなお前のコードの基本の低和音を残す事によって擬似的に特殊な残響を作り出す効果が得られるのです。
サド ジョーンズはこの手法を取り入れる事でそれまでのビッグバンドアレンジには無かったインパクトのある斬新で思いもよらぬ展開を繰り広げることに成功しています。
サド ジョーンズが具体化したこの手法はサド&メル以降に発足したBIG BAND JAZZ ORCHESTRAにとってホーンアレンジの常道となってしまいました。

余談ですがカウントベイシーが自分のバンドに不向きとした一連のサドの新作はひとえに管楽器郡のハーモニーの作り方とPianoを主体とするリズムセクッションが管楽器郡とは別の動きをしながらも微妙に変化し続ける独特のヴォイッシングにあったとされています。
つまり言い換えればベイシーにとってピアニストは休むことなく馬車馬の如くホーンセクッションを追いたてなくてはならない苦闘を強いられると理解したのでしょう。(確かに間違いではありませんが…)
当時のベイシーオーケストラにとって演奏し易いニールヘフティの譜面に比べ、どれほどサドの譜面に驚き困惑したか理解できると思います。

サドがベイシーオーケストラに持ち込んだとされるナンバーが記録に残っているので記載しておきましょう。

<BIG DIPPER>、<A-THAT'S FREEDOM>、<LOW DOWN>、<ALL MY YESTERDAYS>、<THE LITTLE PIXIE>、<THE SECOND RACE>、<BACKBORN>=Basie tried all of them and ultimately rejected all of them
<ONCE AROUND>= Basie not tried

当然これだけの曲数をトライする為には丸一日、もしくは数日間リハーサルを費やさなくては結論は出せなかったと推測できます。
しかし<A-THAT'S FREEDOM>"A"が物語るように見事に崩壊したであろうベイシーオーケストラの姿はサドの目にはどのように写ったことでしょう。

2004.2.14.記



Thad Jones & Mel Lewis Orchestra DISC LINEUP

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